育成就労制度の創設 ~その②転籍~

令和6年6月、出入国管理・難民認定法(いわゆる「入管法」)が改正されました。
これにより「技能実習制度」は廃止され、新たに「育成就労制度」が創設されます。

 

次にその②「転籍」についてです。
育成就労制度の創設 ~その①概要~
育成就労制度の創設 ~その②転籍~

 

転籍について

 

外国人の失踪問題

 

現行の技能実習制度では、外国人の失踪問題なども問題視されていましたよね。

 

そうですね、近年、外国人技能実習生の失踪が社会問題となっており、昨年は職場から失踪した人の数が過去最高の9700人余りとなったことが分かりました。

出入国在留管理庁 技能実習生の失踪者の状況(推移)

 

失踪防止対策

これまでも失踪防止対策として、労働条件等のミスマッチによる失踪の発生を防ぐため受け入れ企業や来日前の技能実習生に対してリーフレットなどで周知・啓発を行うほか、以下のような(一部のみ抜粋)様々な施策を行ってきました。

・失踪者を出した管理団体などに対し、技能実習生の新規受け入れの停止
・技能実習生の受け入れ企業の刑事告発及び公表
・失踪した技能実習生の在留資格取り消しの強化
※出入国在留管理庁 技能実習生の失踪防止対策について

ですが、年々失踪者数は増えているのが現状です。

失踪した技能実習生たちは、日本に来るために背負ってきた借金を返すために日本に残り不法滞在不法就労となるケースも少なくありません。

これらの問題は、労働条件等のミスマッチだけでなく、賃金の不払いや不当に低い賃金、パワハラやセクハラがあっても、職場を移る「転籍」が原則認められていないことが一因とされています。

入管庁は「やむを得ない事情」があれば転籍可能としていますが、内容が不透明であることからパワハラやセクハラを受けた場合は転籍可能と明記するなど、やむを得ない事情の明確化など「転籍」の運用ルールを見直すとしています。

 

本人の意向による転籍

新たな「育成就労制度」では、これまで原則認められていなかった「転籍」が一定の技能と日本語能力があれば本人の意向でも出来るようになります。

これが今回の制度改革の最大のポイントともいえます。

 

現/技能実習制度における転籍要件
・受け入れ先企業の倒産や、パワハラ・暴力などの人権侵害を受けた場合などの「やむを得ない事情」がある場合
新/育成就労制度における転籍要件
・受け入れ先企業の倒産や、パワハラ・暴力などの人権侵害を受けた場合などの「やむを得ない事情」がある場合(範囲を拡大明確化し、手続きを柔軟化
・下記の一定要件の下、「本人の意向」による転籍
(1)転職元と転職先で従事する業務が同一の業務区分であること
(2)転籍元でその業務に従事した期間が、所定の期間を超えていること
(分野ごと1年以上2年以下の範囲内で定められる)
(3)育成就労外国人の技能及び日本語能力が一定水準以上であること
(4)転籍先企業が適切と認められる一定の要件に適合していること
などがあり、詳細は今後主務省令等において具体化されていく予定です。

 

これにより受入れ企業には、労働力確保のため「外国人に選ばれる企業」である必要があり、今まで以上に法遵守が求められることになりますね。

 

外国人労働者にとっても安心して働ける、魅力ある国への第一歩となるといいですね。

 

その他

 

変更点まとめ

技能実習制度 育成就労制度
趣旨、目的 人材育成、国際貢献 人材育成、人材確保
在留資格名称 技能実習(1号、2号、3号) 育成就労
在留期間 1号1年・2号2年・3号2年(最長年) 原則として
対象職種・分野 特定産業分野と一致せず 原則一致
派遣 不可 一部分野で
転籍 原則不可 (条件あり)
不法就労助長罪の罰則 拘禁刑年以下又は罰金300万円以下 拘禁刑年以下又は罰金500万円以下
来日時点の日本語能力 原則無し 原則有り
関係機関 管理団体、外国人技能実習機構 管理支援機関、外国人育成就労機構

 

開始時期と移行期間

育成就労制度は、3年後の令和9年から開始される予定で、3年間の移行期間(技能実習制度と育成就労制度の両制度が併存)後、新制度への完全移行は令和12年頃になるとされています。

 

まだ未確定事項も多い育成就労制度ですが、これから制度施行に向けて具体的な運用ルールが審議されていきます。引き続き注目していきたいと思います。

 

 

詳細はこちら

出入国在留管理庁