これだけは知っておきたい
育児休業に関する改正各法①
令和6年5月および6月に、育児休業に関する改正の公布がありました。
主な改正点は以下のとおりです。
●育児・介護休業法
・柔軟な働き方を実現するための措置を義務化
(公布後1年6ケ月以内の政令で定める日に施行)
・所定外労働(残業免除)の制限の対象拡大(令和7年4月1日施行)
・育児のためのテレワーク導入の努力義務化(令和7年4月1日施行)
・子の看護休暇の見直し(令和7年4月1日施行)
・仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化
(公布後1年6ケ月以内の政令で定める日に施行)
・育児休業取得状況の公表義務が300人超の企業に拡大(令和7年4月1日施行)
●次世代育成支援対策推進法
・100人超の企業に対する育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定の義務化(令和7年4月1日施行)
●子ども・子育て支援法等
・出生後休業支援給付の創設(令和7年4月1日施行)
・育児時短就業給付の創設(令和7年4月1日施行)
「あれ、こないだも改正があったような・・・」
「また改正?」
「もはや定例行事ですか」
そんな声が聞こえてきそうです。正直私も同じように思いました。
ですが、「仕事か育児か」ではなく、男女が共に働きながら
「両立しながら仕事も育児も無理なく出来るように」
「安心で持続可能な社会をつくること」
その実現のために、少しずつ段階的に改正をしているのだと思います。
私も子を持つ親として、仕事をする会社人として、今回の改正をよく勉強し、
顧問先企業様の規定の改正や対応方法についてお手伝いしていきたいと思います。
まずは現行規定のおさらい
【育児・介護休業法の目的と基本理念】
(目的)
第1条 この法律は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに、子の養育及び家族の介護を容易にするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか、子の養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り、もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて、これらの者の福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に資することを目的とする。
(基本理念)
第3条 この法律の規定による子の養育又は家族の介護を行う労働者等の福祉の増進は、これらの者がそれぞれの職業生活の全期間を通じてその能力を有効に発揮して充実した職業生活を営むとともに、育児又は介護について家族の一員としての役割を円滑に果たすことができるようにすることをその本旨とする。
2 子の養育又は家族の介護を行うための休業をする労働者は、その休業後における就業を円滑に行うことができるよう必要な努力をするようにしなければならない。
【育児休業制度(概要)】
◆育児休業とは
労働者が原則として、その1歳に満たない子を養育するためにする休業のこと。
◆対象労働者
①労働者(日々雇用を除く)。ただし労使協定で以下のとおり対象外とされている労働者を除く。
・雇用された期間が1年未満の労働者
・1年(1歳以降の休業の場合は、6ケ月)以内に雇用関係が終了する労働者
・週の所定労働日数が2日以下の労働者
②申出時点において次の要件を満たしている有期契約労働者
・子が1歳6ケ月に達する日までに労働契約期間が満了することが明らかでないこと(子が2歳に達する日まで育児休業を延長する場合は、保育所に入所できない等の特別な事情のほか、子が2歳に達する日までに労働契約期間が満了することが明らかでないこと)
◆対象となる子の範囲
子(実子、養子、特別養子縁組のために試験的な養育期間にある子、養子縁組里親に委託されている子等)
◆期間
原則として子が1歳の誕生日の前日までの期間。ただし、配偶者が育児休業をしているなどの場合は、子が1歳2か月に達するまで出産日と産後休業期間と育児休業期間とを合計して1年以内の休業が可能。(パパママ育休プラス)
◆回数
原則として1歳までの育児休業は2回(分割取得可)、子が1歳以降の休業については、1歳6ケ月及び2歳それぞれ各1回です。
◆男性の育児休業を推進する制度
①パパママ育休プラス
同一の子について両親共に育児休業をする場合の特例で、子が1歳2か月に達するまで育児休業を取得することができる。
②出生時育児休業(産後パパ育休)
育児休業とは別に、子の出生日から8週間以内に最大4週間まで取得できる育休制度。原則として休業開始2週間前までに申出を行い、分割して2回取得することができる。
また労使協定を締結することで、労働者の合意の範囲内で休業中に就業することができる。
◆その他の制度(出産前)
①育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
育児休業と産後パパ育休の申出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければなりません。(複数の措置を講ずることが望ましい)
研修の実施 |
相談体制の整備 |
自社の取得事例の収集・提供 |
自社の育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知 |
②妊娠出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対する個別の周知・意向の確認
申出をした労働者に対して、事業主は以下の事項の周知と休業の取得意向の確認を、個別に行わなければなりません。
育児休業・産後パパ育休に関する制度 |
休業取得の申出先 |
育児休業給付金に関すること |
労働者が育休期間中に負担すべき社会保険料の取り扱い |
※面談(オンライン可)もしくは書面交付により行います。
労働者が希望した場合は、FAX、電子メール等の方法でも可。
③不利益取扱いの禁止
妊娠・出産等、または育児休業の申出・取得等を理由に、事業主が解雇や退職強要、正社員からパートへの契約変更等の不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。
④ハラスメントの防止措置
妊娠・出産したこと、育児休業の申出等をした労働者に対して、就業環境を害するような言動をしてはいけません。また、これらのハラスメントを防止する措置を講じることが事業主には義務付けられています。
◆その他の制度(出産後)
①子の看護休暇
小学校に入る前までの子を養育する労働者は、子の病気や怪我、予防接種や健康診断を受けさせるために、年に5日まで(子が2人以上の場合は10日まで)休暇を取得することができる。1日単位又は時間単位での取得が可能。
②所定外労働を制限する制度
3歳に満たない子を養育する労働者が請求をした場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。
③時間外労働を制限する制度
小学校に入る前までの子を養育する労働者が請求をした場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはいけません。
④深夜業を制限する制度
小学校に入る前までの子を養育する労働者が請求をした場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、午後10時から午前5時までの深夜に労働させてはなりません。
⑤時短勤務制度
次のすべてに該当する労働者が申し出た場合は、事業主は時短勤務(原則として1日の所定労働時間を6時間に短縮する)措置を講じなければなりません。
3歳に満たない子を養育する労働者である | ||||
1日の所定労働時間が6時間以下でない | ||||
日々雇用される者ではない | ||||
短時間勤務制度が適用される期間に育児休業をしていないこと | ||||
あらかじめ労使協定により定められた、次の適用除外者でないこと
|
◆その他の制度
①育児休業取得状況の公表の義務化
従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられています。公表内容は「男性の育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」で、自社のHPなどの他、厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」で公表されています。
次回、改正点についてもう少しご紹介したいと思います。