外国人採用の壁を突破する!「在留外国人基礎調査」から見えた早期離職を防ぐアプローチ

少子高齢化に伴う深刻な人手不足を背景に、優秀な外国人材の採用・活用は、今や多くの企業にとって持続的成長の鍵を握る重要戦略となっています。

しかし、せっかく採用した外国人職員が「思っていたのと違う」と早期に離職してしまうケースは少なくありません。彼らは一体、職場で何に困っているのでしょうか?

出入国在留管理庁が実施した「在留外国人に対する基礎調査(※)」の結果をもとに、外国人を採用する企業、あるいはこれから採用を検討する企業が今すぐ実践できる具体的な「トラブル未然防止策」を労務管理の視点から解説します。

 

在留外国人に対する基礎調査とは…在留外国人の置かれている状況や、就労・生活上の課題を的確に把握し、共生施策に活かす目的で令和2年度より毎年実施されている政府の調査です。

 

■困りごとのトップは「給料・休み・労働時間」

――「納得感」を生むルール開示が、最大の信頼につながる

令和7年度の調査において、仕事上の困りごととして常に上位を占めるのが「給料が低い(29.1%)」「休みが取りにくい(7.4%)」「労働時間が長い(6.6%)」という項目です。特に「給料が低い」は、物価高に賃金が追いつかない日本経済の現状を背景に、令和2年度の調査開始以来トップを走り続けています。

ここで重要なのは、「給料を上げられる」ことは必要ですが、それだけが解決策ではない、という点です。

まずは自社の評価・給与制度をオープンにし、「どのようなスキル・成果を上げれば昇給するのか(昇給基準)」「各手当の支給条件は何か」を、外国人職員が入社時に明確に理解できるよう、分かりやすい資料で説明することが不可欠です。

 

人事担当者が押さえるべきポイント:「同一労働・同一賃金」の遵守

同じ業務内容・責任範囲であれば、国籍を問わず同一の給与レンジを適用する必要があります。外国人職員から「なぜ私の給料はこの額なのか」と質問された際、論理的に説明できる準備を整えておくことが、組織への信頼感を高めます。

 

■実務の現場で起こる「文化・雇用慣行のギャップ」

「知識としての日本のルール」と「実際の現場での経験」には、大きなギャップがあります。外国人職員が日本の法律やルールを学んで入社したとしても、「なぜそのルールが必要なのか」という背景(商習慣や文化の違い)までは理解しきれていないことが多いのです。

実際に、ある企業からこのような相談がありました。

 

【トラブル事例:一時帰国のための有給一括消化】

外国人労働者から「母国に一時帰国するため、有給休暇を全て消化して長期休暇を取りたい」と企業の担当者に相談があった。しかし、その申し出は帰国予定の3週間前。本人はすでに航空券を予約しており、シフト調整が間に合わず現場が大混乱に陥ってしまった。

有給休暇の取得は労働者の権利ですが、現場のシフト調整や業務の引き継ぎには一定の準備期間が必要です。 これを防ぐためには、事前のルール化が鍵となります。

 

対策例: 「〇週間(または〇ヶ月)以上の長期休暇を希望する場合は、あらかじめ〇ヶ月前までに会社へ相談・申請してください。そうすれば、会社も代替要員の調整など、気持ちよく送り出すための準備ができます」

このように、「なぜその事前申請が必要なのか」という理由とセットで、入社時とその後も定期的に丁寧な説明しておくことが不要なトラブルを未然に防ぐ特効薬になります。

■企業の負担を減らす「公的多言語ツール」の活用

おすすめツール①:「外国人職員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集」

日本と外国の文化や雇用慣行のギャップを踏まえ、外国人職員に労働条件を説明する際、「どういう表現を使えば誤解なく伝わるか」の具体例や注意点がまとまっています。社内の説明資料作成や、質問への回答マニュアルとして非常に有益です。

「外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集」 厚生労働省

 

おすすめツール②:「雇用管理に役立つ多言語用語集」 

主要な言語に対応し、雇用に関する重要な専門用語の意味や例文を、日本語対比の辞書形式で検索できます。企業の担当者が説明する際や、外国人職員が自身でルールを確認する際の「言葉の壁」を劇的に下げてくれます。

雇用管理に役立つ多言語用語集 厚生労働省

 

まとめ:多様性を受け入れる体制づくりは、企業を強くする

外国人雇用で成功している企業の共通点は、「なぜ外国人労働者を採用するのか、どのように共に成長していくのか」という経営方針が、経営層から現場の従業員まで深く浸透していることです。一部の担当者にだけ受け入れの負担が偏っている状況では、定着は望めません。

確かに、初めての外国人採用には、就業規則の見直しやルールの言語化など一定の負荷がかかります。しかし、これらを取り組んだ企業の多くから、以下のような前向きな声が上がっています。

  • 「誰にでも伝わるようにルールを整理した結果、日本人社員の説明能力が上がり、社内の標準化(マニュアル化)が進んだ
  • 「異なる文化や視点を持つ人材と働くことで、既存社員の視野が広がり、新しいアイデアや業務改善のヒントが生まれた

今後、多様なバックグラウンドを持つ人材の採用は更に一般化していきます。貴社の採用・雇用管理における説明ステップや就業規則は、最新の、そして「誰にでも分かりやすいもの」になっているでしょうか?

「外国人採用にあたって、どのような人事評価・制度設計が必要か」「自社の就業規則をどう見直すべきか」など、具体的なご相談がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください!